乳房再建の話 その①日本の乳房再建

 乳がんの手術などで乳房を失った方に、乳房再建という選択肢があります。乳房再建は乳房の膨らみを取り戻す方法で、術後の外見に関する悩みを減少させる目的があります。
 現在、日本では諸外国に比べ乳房再建はあまり多く行われておりません。

日本の乳房再建の現状は?

 下記のグラフの通り、米国で4割、韓国では5割程の方が乳房再建を受けているのに対し、日本は1割強に留まっています。

 下は都道府県別に見たグラフです。東京が26%で最多です(それでも少ないと思います)。岡山近隣の県でみると、岡山、広島は16%、17%、愛媛が6%、香川・徳島は4%、鳥取、山口は3%程です。
 国民性や県民性も多少影響しているかもかもしれませんが、これだけ少ないと乳房再建の機会・選択肢がすべての患者さんに公平に与えられていないような気がします。

乳房再建率は全国平均で12.5%。2%、3%台の県も目立ちます

乳がん術後も長い人生が

 一方、乳癌の死亡率は低下しており、乳がん全体の8割以上を占めるステージ0~Ⅱまでの患者の5年生存率は9割を超えます(ステージ0は100%生存、ステージⅠでも98%生存)。乳がん自体は増えていますが(治療をしっかり受ければ)その多くは命に関わりません。
 乳がんは比較的年齢の若い方に発症しやすいですが死亡率が低く、手術を受けた後でも長い人生があります。そして乳房再建はその後の乳がんの再発や死亡率には影響しません。

日本で乳房再建が増えない理由は?

 ではなぜ乳房再建は増えないのでしょうか?
 一つは病院で乳房再建を増やせない現状があると思います。再建術は時間がかかるので他の手術ができる時間が減ってしまいます。また入院期間が延びると入院ベットに余裕がなくなります。
 次に主治医が乳房再建の説明や形成外科との連携に十分な時間を割けないこともあるでしょう。私自身も総合病院の乳腺外科で働いていた時は病棟や検診業務をこなしつつ1日に30人程の外来がん患者さんを診なければなりませんでした。外来は1~3時間待ちは当たり前の状況で、なるべくすべての方に再建のご案内をしたかったのですがご高齢の方や治療が複雑な方には十分な説明ができていませんでした。
 その他には再建ができる乳腺外科医、形成外科医の不足もあるでしょう。これも大きな原因ですがどの科でも医師不足は問題となっておりすぐに解決できる問題ではありません。

まとめ

 比較的若い方が罹り、死亡率の低い乳癌ですが、以上のような理由で日本では乳房を失ったまま長い人生を過ごしている方がとても多くいらっしゃいます。
 当院では例え乳房を失った後でも再建という選択肢があること入院は不要で日帰りでもできるということを乳がん患者さんたちに広め、術後の人生を豊かにするお手伝いをしたいと考えています。

 安全なシリコンバック再建について、当院で行っている日帰り乳房再建の実際についてはまた別の回で詳細に解説したいと思います。

文責:河田外科形成外科 乳腺外科 河田健吾

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