乳房再建の話 その②シリコンバックについて

今回は乳房再建で最も広く行われているシリコンバックによる方法について解説します。


ー医療用シリコンの安全性

シリコンはタンパク質が含まれないのでアレルギー反応が起きにくく安全な物質です。人体に埋め込む素材としても長い歴史を持ち、心臓のペースメーカーや人工関節、眼内レンズ等にも応用されています。医療用シリコンは最もグレードの高いものが使用され厳しい安全基準を満たさないと使用が認められません。

ペースメーカーなど様々な医療現場で応用されているシリコン

ーシリコンバックの構造

再建術に使用されるシリコンバックは、外側は多層構造の膜に覆われ、内部はシリコン製のジェルが充填されています。外側の膜は非常に伸縮性に富み、破れにくい頑丈な構造ですが、万が一膜が破れても中身が簡単に漏れ出てこないようにジェルは流動性の低いものが採用されています。

☞上記のようにシリコンバックは安全な素材と構造で厚生労働省により安全性が認められ、保険治療での使用が承認されています。

大きさ高さ直径等、個人に合わせたバックが選択される
モティバエルゴノミクスはラウンドタイプで重力により形状を自然に保ちやすいインプラントです

ーバックの耐久性

前述のとおり、バックは非常に頑丈な構造をしています。何かにぶつかったり、つぶされたりしても破れません。下のグラフはシリコンバックを入れた人を10年間観察した結果です。おおよそ10年で1割に満たない破損率です(画像検査上の破損率が9.7%。実際に手術で破損が確認されたのは5.7%)。逆に言えば9割超は10年たっても大丈夫ということです。少し古いデータかつ、バックの性能も様々なものが含まれていますから今の保険で認められている最新シリコンの方がより破損率が少ない可能性もあると思います。
とはいえ、一応定期的(最低1年に1回)に超音波等で確認しておいた方が良いでしょう。乳房再建術後の方は乳がんの定期的な受診があるので大丈夫かと思いますが、再建した側もバックが入っている限りはしっかり検査をしてもらいましょう。
河田外科形成外科ではシリコンバックが入っている方は生涯に渡り1年に1回バックの点検・乳がん検診を行っていきます。必要に応じて画像センターでMRI等の検査も可能です。

ー破損したら?入れ替え手術とは?

バックの中身は流動性のないシリコンジェルであり、バックの外にも自分の組織で出来た被膜というカプセル構造が作られているので、表面に亀裂や破れが生じても忽ち周りの組織への影響はありません。また自覚症状もありません。しかしそれを月単位、年単位で放置すると、変形したり硬くなったり、少しずつ周りにシミ出ていく(浸潤という)ことがあります。

ですので、破損が見つかれば入れ替え術の適用です(保険適用)。通常の入れ替え術は初めての再建した時よりも体への負担・痛みは圧倒的に少なく済みます(当院では日帰り手術)。再建術は大胸筋の下を剥がしてスペースを確保する必要がありましたが、入れ替え時はそのような手技が必要なく、要は前回の手術の傷から、被膜内にできた空間のバックを入れ替えるだけです。

ただし破損後に時間が経って変形・浸潤や被膜の硬化が起きていたりすると、中身を入れ替えても外見が悪くなりやすいのでその時は被膜の前に入れたり、被膜を一旦除去したりしないといけないので、少し大変になります。年に1回は乳がん検診と一緒にバックの点検を行いましょう。

ーシリコンバック法のメリット・デメリット

シリコンバックによる再建は他の再建(自家組織法等)と比べ痛みや体へのダメージが少なく胸以外の場所にメスを入れることはありません。当院では日帰り手術を行っています。
また希望や、炎症などのトラブル発生時の除去もしくは入れ替えが比較的容易に行えます。シリコンは吸収されず萎縮(筋肉を使った再建は術後縮みやすい)もないので大きさ、形状が維持されやすいのも、メリットです。
デメリットは下垂した乳房は再現できないことです。反対側が下垂している場合はそちらの挙上術(つり上げ)もしくは豊胸術(自費診療)を行うことでで左右のバランスを整えることができます。
また放射線治療後は皮膚が硬くシリコンバックによる方法は難しい時が多いです。破損やBIA-ALCL(後述)等のチェックのため1年に1回は定期検査が必要ですが、乳がん治療後の方は定期検査と同時に行えるので負担の増加はあまりないと思います。

メリット

  • 手術侵襲(体へのダメージ)が少ない
  • (当院では)日帰り手術が可能
  • 体の他の場所に傷ができない
  • 抜去もしくは入れ替えが容易
  • 大きさ・形が維持されやすい

デメリット

  • 下垂した乳房は再現できない
  • 被膜拘縮のリスク(少ない)
  • 放射線治療後はできないことがある
  • 破損したら入れ替え術が必要
  • 1年に1回は定期検査

ーBIA-ALCLってなに?

BIA-ALCL(Breast Implant-Associated Anaplastic Large Cell Lymphoma:乳房インプラント関連未分化大細胞リンパ腫)は、乳房インプラントを入れた方に非常に稀に発生するリンパ腫です。
早期に発見できればバックを被膜ごと取り除くだけでほぼ完全に治るという特徴があり、定期的な検査を行っていれば過度に恐れる必要のない疾患です。
当院で主に使用するモティバエルゴノミクス®は、85カ国以上、500万個以上のブレストインプラントが使用されていますがモティバのブレストインプラントでの発生は今のところゼロです。

モティバ エルゴノミクス®

ーまとめ

乳房再建におけるシリコンバック法は世界で最も行われている術式で、厚労省の認可の下保険で行うことができる治療です。万が一破損しても除去や入れ替えは比較的ラクに行えます(定期検査はしっかり受けましょう)。
当院では乳房再建(保険診療)、反対側のバランス修正(自費診療)、乳輪乳頭再建(保険診療(アートメイク)は自費)が可能です。もし乳房再建にご興味をお持ちでしたら一度ご相談下さい。

Contact お問い合わせ

アート
メイク
予約
施術
モニター
募集
当日
順番予約
Page Top